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ヤングケアラーについて知ろう 私たちができる支援 前編

ヤングケアラーについて知ろう 私たちができる支援 前編
「ヤングケアラー」という言葉を耳にする機会が増えましたが、その実態や、彼らが抱える本当の苦労についてはまだ十分に知られていないのが現状です。
この記事では、ヤングケアラーの定義から、彼らが直面する壁、そして社会ができる支援についてわかりやすく解説します。

ヤングケアラーの定義と主な内容

ヤングケアラーとは、「家庭の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」を指します(子ども・若者育成支援推進法)。
日本においては、およそ17人にひとりの割合で存在している(中学生)という調査結果もあり、決して他人事ではない身近な問題です。

主なケアの内容

・病気や障害のある家族の介助
・看病 ・幼い兄弟の世話や送迎
・日本語が不自由な家族のための通訳
・精神的な悩みを抱える家族の感情的な支え
・多忙な保護者に代わる家事全般(料理・洗濯・買い物)

なぜ「問題」とされるのか? 心身や将来への影響

家族を助けること自体はすばらしいことですが、その負担が大きすぎると、子どもの日々の生活や将来、心身の健康に深刻な影響を及ぼします。

【影響を受ける分野】具体的な内容

【教育】遅刻・欠席が増える、宿題をする時間がない、進学を諦める
【人間関係】友達と遊ぶ時間がない、孤独感を感じる、相談相手がいない
【心身の健康】睡眠不足、慢性的な疲労、過度なストレスや不安
【就職・キャリア】就職活動の時間が取れない、介護離職のリスクが高まる
ヤングケアラーは、本人も周囲も「それが当たり前の家庭の姿」だと思い込んでいるケースが多く、支援の手が届きにくいのが最大の特徴です。

「お手伝い」とヤングケアラーの違い

一般的なお手伝いは「子どもの成長を助ける範囲」で行われますが、ヤングケアラーの場合は「子どもがやらないと家庭が回らない」という責任と負担の重さに違いがあります。

【事例紹介】ヤングケアラーが直面する葛藤

ヤングケアラーが直面する負担は、家庭環境によって千差万別です。ここでは代表的な3つの事例を紹介します。
ケース1:
精神疾患のある母親を支える中学2年生(Aさん)

母親がうつ病を患っており、気分の浮き沈みが激しいため、Aさんは常に母親の顔色を伺って生活しています。
◎具体的な負担 母親が起きられない日は、小学生の弟の朝食を作り、学校へ送り出す。放課後は母親の話し相手(感情のケア)に数時間を費やし、自分の勉強は深夜になってから。
◎周囲からの見え方 「しっかり者のお姉ちゃん」に見えるが、本人は「自分が支えないとお母さんが壊れてしまう」という強いプレッシャーで、慢性的な睡眠不足と不安を抱えている。

ケース2:
若年性認知症の祖父を介護する高校3年生(B君)

共働きの両親に代わり、放課後は自宅で祖父の見守りを担当しています。
◎具体的な負担 祖父の見守り、食事の介助、トイレの失敗の後始末など。
◎周囲からの見え方  介護のために部活動を辞め、放課後はすぐに帰宅するため、友人との付き合いが極端に減る。進路希望も「介護ができる範囲の地元の大学」に絞らざるを得ず、将来の選択肢が狭まっている。

ケース3:
日本語が話せない親をもつ小学5年生(Cさん)

外国籍の親をもち、生活のあらゆる場面で「通訳」の役割を担っています。
◎具体的な負担 役所からの重要な書類の翻訳、病院での医師とのやり取りの通訳、三者面談での自分の成績についての通訳。
◎周囲からの見え方  「バイリンガルで頼もしい」と思われるが、実際には子どもの語彙力では理解しきれない難しい公的な内容を扱わされ、ミスが許されないという過度な責任を背負っている。

事例から見える「ヤングケアラーの共通点」

これらの事例に共通しているのは、子どもたちが「当りまえのこと」と思っていたり、「これが自分の役割だ」と責任を強く感じており、自ら「助けて」と言い出せない点です。

家族への愛情:
家族が好きだからこそ、自分が犠牲になることを受け入れてしまう。

プライバシーの壁:
家庭内のことを他人に話すのは「恥ずかしい」「家族を裏切ることになる」と感じてしまう。

相談先の不在:
誰に、どこまで話せば状況が変わるのかがわからない。

社会に求められる「アウトリーチ(能動的な働きかけ)」:
彼らは自ら名乗り出ることは稀です。そのため、学校や地域が「おかしいな?」と感じたときに、家族全体をサポートする福祉サービス(ヘルパーの導入や訪問看護など)を提案し、子どもの肩から荷物を下ろしてあげる仕組みが不可欠です。

周囲が気づくためのポイントと適切な声かけ

1.「気づく」視点を持つ:
「いつも疲れている」「遅刻が多い」といったサインを見逃さない。

2.否定せずに話を聞く:
「大変だったね」と寄り添う姿勢が大切です。ただし、「偉いね」という言葉は、逆に子どもを追い詰めることもあります。

3.専門機関へつなぐ:
学校(スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー)、自治体の相談窓口の存在を伝え、孤立を防ぎます。

孤立を防ぐために専門機関への相談を

ヤングケアラー問題の本質は、家族を愛する子どもの優しさに甘え、公的な支援が届いていないことにあります。子どもたちが自分の人生を自由に選択できるよう、まずは私たちがこの問題を正しく知ることが第一歩です

書籍紹介

わたしの声をきいて3 家族のお世話をしている子どもの本当の気もち
わたしの声をきいて3 家族のお世話をしている子どもの本当の気もち
商品説明
小学校低学年の子どもを対象に、様々な状況にある子どものことを「本人の声」の形で紹介するシリーズの一冊。本書は「ヤングケアラー」がテーマ。ヤングケアラーの状況をまとめた大人向けの解説も収載。子どもが自分で読めるほか授業や家庭での読み聞かせに最適。
書籍情報
著 者:
野尻紀恵=監修
発行月:
2025年05月
ISBN:
978-4-8243-0238-0
3,520円税込
子どもの語りからわかる 精神疾患のある親をもつ子どもの支援
子どもの語りからわかる 精神疾患のある親をもつ子どもの支援
商品説明
「親の精神疾患とともに生きる子ども」に焦点を当て、これまで語られなかった彼らの困難や支援方法を具体的に解説。著者の調査で得られた「子どもの語り」から子どもたちの実態を明らかにし、支援方法を示す。地域の支援者や教育関係者必携の一冊。
書籍情報
著 者:
田野中恭子=著
発行月:
2025年06月
ISBN:
978-4-8243-0286-1
2,750円税込
子育てと介護のダブルケア 事例からひもとく連携・支援の実際
子育てと介護のダブルケア 事例からひもとく連携・支援の実際
商品説明
介護と育児を同時に担う「ダブルケア」。本書はケアマネジャーや保育士などの専門職が、普段の業務の中でダブルケアラーに気づき、話を聴き、関係機関につなぐといった支援のための手引書。多様なケースを学べる26事例を収載。制度や社会資源も整理し当事者にも参考になる。
書籍情報
著 者:
渡邉浩文、森安みか、室津 瞳、植木美子、野嶋成美=編著
発行月:
2023年03月
ISBN:
978-4-8058-8826-1
2,420円税込

ヤングケアラーかもしれないあなたが少し楽になるカウンセリング・ブック

ヤングケアラーかもしれないあなたが少し楽になるカウンセリング・ブック
ヤングケアラーかもしれないあなたが少し楽になるカウンセリング・ブック
商品説明
10代~30代までのヤングケアラー・若者ケアラー当事者に向けた、メンタルヘルスケアと人生設計のためのガイドブック。知らないがゆえに将来の可能性が狭まることにならないように、「周囲へ支援を求める」選択肢を早い段階から増やすべく、やさしくサポートする。
書籍情報
著 者:
田中悠美子=著
発行月:
2026年03月
ISBN:
978-4-8243-0400-1
1,980円税込
「自分にできることなんて、たいしたことはない」
そう感じる方も多いかもしれません。

けれど、一冊の本が、「自分の気持ちを初めて言葉にできた」瞬間になったり、「もう少し生きてみよう」と思える支えになったりすることがあります。

このプロジェクトは、そんな一冊を、必要な子どもたちに届けるためのものです。

もしよければ、まずはページをのぞいてみてください。知ること、気にかけることも、大切な応援の形だと思っています。

▼ヤングケアラー支援プロジェクト詳細・ご支援はこちら
「ひとりじゃないよ。ヤングケアラーに直接届けたい全国寄贈プロジェクト」
(Readyfor公式プロジェクトページへ遷移します)

後編はこちら