幻聴の世界 ヒアリング・ヴォイシズ

音源が分からないのに、声や音が聞こえる現象。
幻聴は、社会の医療化の中で生み出されたもので、本質的に障害ではない。
とはいえ、生活に支障をきたすことも多く、障害といえなくもない。
従来の医学では薬物療法で対処してきた幻聴を、
ヒアリング・ヴォイシズの視点から幻の声の正体を探っていく。
対処方法も紹介するとともに、脳科学の知見から幻聴のしくみを解明する。

日本図書館協会選定図書

はじめに より抜粋
あなたは今、満員の通勤の電車の中にいる。
そのとき――。
「痴漢! 何するのよ!」
「痴漢はお前か!」
との声。
驚いて、あたりを見回しても、誰一人あわてる様子もなく、整然とした車内。
しかし、どこからともなく、
「早く逃げないと、お前の人生は目茶目茶になるぞ!」
とっさに次の停車駅で人をかき分け電車を降りる。そんなあなたを周囲の人は冷たく眺めている。

何の変哲もない日常生活で、このような声が突然聞こえてきたら、と想像してみてほしい。
どこからともなく聞こえてくる声。
こうした、現実離れした声が聞こえる現象を、精神医学の世界では「幻聴」と呼び、「統合失調症」の主要な症状と考えていた。

「幻聴」の内容に意味はなく、耳を傾ける必要もないとされていた。
しかし、「幻聴」を聞いている人からすれば、日々幻の声に苦しめられている「現実」があるのだ。



目 次
序 章 ようこそ「声」の世界に
    ある幻聴体験者の体験
    禅と幻聴体験

第1章 幻聴ってどんなもの?
    「声」が聞こえると言うこと
    幻聴はいつの時代からあったのか
    幻聴の実体を探る
    幻聴との付き合い方

第2章 幻聴の脳科学
    幻聴と脳科学をめぐる状況
    言語の中枢
    MRIによる形態画像研究
    脳機能画像研究
    最近のトピック

第3章 幻聴と認知行動療法
    最近20年の大きな変化
    幻聴の心理教育・認知行動療法に関心を抱いた理由
    幻聴に対する心理教育
    幻聴に対する認知行動療法

第4章 幻聴・ナラティブアプローチ
    聴声器を発明した人
    スピリチュアリティの世界
    イルカと三〇年交信した男性

第5章 インタヴォイスの活動
    ヒアリング・ヴォイシズの考え方
    インタヴォイス・ミーティング
    ワールド・ヒアリング・ヴォイシズ・コングレス

第6章 精神医学と幻聴
    ヒアリング・ヴォイシズとの出会い
    マーストリヒト面接法の実際
    対処するアプローチとWEBMP

第7章 幻聴への新しいアプローチ
    ヒアリング・ヴォイシズへの道案内
    ヒアリング・ヴォイシズという概念の核心
    マリウス・ロウムの研究
    マーストリヒト面接法
    声を聞く人たちの話
    医療モデルとヒアリング・ヴォイシズ概念の矛盾から統合へ

附 章 回復は孤立のなかでは起こらない
    精神病と回復
    声を聞くまでの個人史
    回復へのステップ

書籍データ
著者日本臨床心理学会=編 判型四六
ISBN978-4-8058-3369-8 頁数214頁
発行日2010年10月10日 価格1,512円(税込)
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